スマホアプリの有料ゲーム『Florence』のレビューです。
独特な作品であるFlorenceはゲームとして捉えるのではなく、一つの映像作品として、アートとして見ると、ゲームの持つ体感部分の意味が理解できます。
「こんな表現方法があるんだ」ってアート好きな人にとっては良い刺激を受ける作品です。
- セリフなしの映像作品で感動した事がある
- 恋愛における普通の出会いと別れに感情移入してしまう
- アートとかクリエイティブな事が好きである
逆に言えば上に当てはまらない人にとってはFlorenceにハマるのは難しいかなと思います。
ゲームの基本情報
- 題名 : Florence(フローレンス)
- 種類 : アドベンチャー
- 記録 : オート
- 画面 : 縦向き固定(一部横向き固定)
- 料金 : iOS 240円、Android 330円
Florenceの概要:構成と物語の進め方
Florenceは映像作品+αな表現になっているので進め方についてはかなり独特です。まずはどういった流れで進めていくのかを紹介します。
物語は章立てにセリフ無しの独特な表現
Florenceの構成ですが大きくは第6幕まで、細かくはチャプターに分かれています。チャプターを1から順番に進めていって物語を楽しむスタイルです。

全体のボリュームは約1時間。有料コンテンツという事もあってやはり「短い!」というコメントは見受けられました。
私も正直「えっもう終わり!?」という感じでした・・・。
肝心の物語の部分も独特です。セリフは全くありません。ですが1人の女性の初恋におけるときめきや苦悩、という一つのリアルな恋愛模様を描いています。
セリフが無い表現手法も相まってか、どちらかというと女性の方が感情移入しやすい作品かなと思います。

基本は縦スクロール漫画を読む感覚
Florenceの表現方法としては色んな手法が使われています。1枚絵の切り替わりだったり、時には横スクロールの表現があったり。
色んな見せ方を組み合わせているのがまたアート的に面白いのですが、所々に入る縦のコマ割りがまるで縦スクロールマンガを読む感覚に近くて印象的でした。

でもただ読ますだけではなくってそこに体感がプラスされます。具体的にはタップやスワイプの操作が入るので、例えばコマの中のある物をスワイプさせたりとか。
自分の操作によって変化する画面を楽しむというギミックの部分もFlorenceならではの特徴です。
セリフが無ければコマの動きも本当に伝えたい事だけを描いたかのようなシンプルさで、こういった表現方法が凄く斬新に感じられました。
Florence内のチーム紹介を見ると外国の方が作られたゲームなんですね。国がどうという事もないですが、どこかしら日本的では無いなという感じがしたのでやっぱりと思いました。

なぜゲームとして捉えてはいけないか
Florenceは最初、ゲームカテゴリーに入っていた事もあって完全にゲームだと思っていました。ゲームの感覚でプレイし始めました。
すると・・・
まずこんな感じで進んでいくというのを見せますと。
チャプター1が始まると主人公を描いた1枚絵と時計があって。時計をタップすると時刻が進んで次の絵に切り替わります。

次に歯磨きのシーン。何かゲージがあって、下の歯ブラシを上下にスワイプでゴシゴシさせるとゲージがたまり一杯になると次にシーンに切り替わります。

こんなのも。主人公が7歳の時の思い出のシーン、母親に勉強を教わっています。

画面が切り替わるといきなり計算問題へ。正解の数字を点線枠に持っていくと話が進みます。

というような感じなので、ゲームとしてプレイすると「えっ何これ?」ぽかーんってなります。笑
それはただの超絶簡単な作業でしかなくゲーム性もあったものでもないので、ただただつまらないだけです。
私は途中で「あっこれはゲームではなく視点を変えないといけないな」と思って、見方を変えました。
ゲームではなくて『映像作品+α』 α部分が体感だと思えば、制作者が伝えたいところに強制的にフォーカスさせるテクニックなんだと捉えられ、その意味を理解できます。
というかFlorenceはゲームのカテゴリーに入れてしまうのは可愛そうな気がします。しかもパズルゲームに分類されていて、せめてアドベンチャーならまだ違和感なかった気が・・・。
印象的な表現:パズルピースと時計
Florenceは独特な絵の見せ方とタップ操作を組み合わせて、ある女性の物語をより体感的に印象に残るように、仕掛けが至る所に組み込まれています。
プレイしてみて一番印象的だったのはパズルピースと時計の仕掛けでした。
あるチャプターでは、セリフが無いのに彼との会話を吹き出しを使って見せてきます。
主人公である彼女の吹き出しは、画面下にあるパズルピースでプレイヤーに作らせます(ここをパズルゲームとして捉えてはダメです!)

凄いと思ったのがこのパズルピースは彼女の感情とリンクしているという点です。そういった表現方法なんだという点です。
何度か出てくるパズルピースが彼女の感情の変化によってどう変わっていくのか、の体感を楽しむ感じです。
一方で時計による表現も見事に思いました。
彼女の人生の一部分を描いている物語の中では月日の経過による変化も描いています。
あるところで画面下に時計が現れ、くるくる回転させると時間を進めたり戻せたりするわけですが。
画面上の絵も呼応するように進んだり戻ったり変化します。
時の流れによる変化が凄く伝わってきます。

ありふれたストーリーをどう捉えるか
ストーリーについてはジャンル的には恋愛を描いていますが、内容そのものはありふれていると言わざるを得ないと思います。
そのありふれたを共感しやすいと捉えるか、つまらないと捉えるか。難しいところです。
『実生活の一片』というテーマ性からすると、描きたかったことがストレートに伝わってくるので「うんやっぱり良かった。」何かそんな感想に落ち付きますが。
「ありふれた日常だけど恋愛ってそういうものだよな、良い時もあればダメな時もある。そして何かをきっかけにまた前向きに歩み出して・・・。」
結局はそれの繰り返しだったり。
そんな実生活の一片にいかに共感できるかが勝負の分かれ目だと思います。多分、きっと女性の方が共感できそう(差別的な意味は全くなく。)

まとめ:Florenceはエモい
率直に感じたFlorenceの特徴、一言でいうなれば『エモい』
何度も言いますがゲームとしてプレイしてしまったらただのクソゲーです。そうではなく一つの芸術作品として見たら感性豊かな人は色んな刺激を受ける良い作品、となります。
確かに1時間で終わっちゃうボリュームに対して値段を考えてしまうと、賛否両論ありそうです。
これも見方を変えて、ある意味作品の展示会を見ているような雰囲気もあるので。1時間で回れる展示会に入場料を330円(Androidの場合)払ったと思えば安いなって感じます。
個人的にはアート好きだからというのは大きいですけど、損したとは思わなかったですね(こんな表現あるんだって勉強にもなりました。)
