マンガアプリcomicoで連載完結したオリジナル漫画「失格人間ハイジ」
まず、どんな人に読んで欲しいのだろうかと考えました。
余所様では「生き方に悩んでいるすべての人に読んで欲しい」と書いてあり、私も20代後半に一度夢をあきらめた経験があるので凄く共感できました。
ただ、みんながみんな夢に向かってがんばっているわけではないですよね。夢がない事への悩みとか、毎日が平凡に過ぎていく事への焦りとか。
どちらかというとそっちの方がリアルです。
それに、夢があってもそんなに上手くいかないのが人生で。簡単に成し得ないから夢なのであって。
本当にリアルを描いた漫画なんです。
そして特徴は話の内容だけではなく。
comicoという縦スクロールマンガを最大限に活かした構成であったり、台詞等の言葉のチョイスが美しかったり、重い話なのにユーモアさが散りばめられていたり。
失格人間ハイジを読んで素直に感じたこと、学んだこと、沢山あるのですが、自分なりの面白いと思うポイントをまとめてみました。
物語のあらすじはニコ動から
まずは3分で簡潔に要点を得たあらすじをニコ動にてご覧下さい。
これが俗に言う手抜きってやつです。って違います。
唯でさえ書きたい事が山ほどあるので、ちょっとでも文字数をコンパクトにするための作戦です。笑
因みに、動画でもあったように「失格人間ハイジ」は書籍化されていません。
なのでcomicoでしか読めませんし、今後も書籍化の望みは薄そうです。というのも作者曰く後一歩のところで人気が足りなかったと。
そう、なぜか人気があがらないんです。やっぱりcomicoの読者層が10~20代中心でハイジの話の内容が割と大人向けだからか。
でも読んだらどっぷりとハマる人が多い。コメントから読者の熱気が物凄く伝わってきます。というのは後ほど紹介します。
ジャンルは恋愛マンガだが・・・
ハイジの恋愛ドラマなところも大好きな方にとっては申し訳ない、恋愛要素の部分だけは批判的な表現をします。
ただしダメだというわけではないという事、最初に言っておきます。
普通に面白いんです。でも、”普通に”なんです。恋愛要素に関しては、他のマンガではこんなの見たことない!みたいなのは無かったというだけです(あ、主人公の親友においては恋愛部分も展開が実に斬新に思いました。)
悪くいうと「ありきたり」とか「定番」とか。

まず第1話目で主人公はヒロインと出会って直ぐに一目惚れしてしまいます、ってとっかかりの部分はまあ、普通ですよね。
すぐに第2話目の合コンで偶然ヒロインと再会、偶然にも共通のネタがあり話が盛り上がるってのもありがちですし。
そして第21話でヒロインを取り合う主人公のライバルとなる完璧人間レイジの登場。文字通り何でもできる完璧人間な彼は失格人間ハイジの対比的な存在です。

このレイジの存在は斬新とまではいかないですが、三角関係のバトル的展開は面白くて読み応えあります。
なのでほんと、話の展開は冷静にみると普通かなと思っただけで、その表現の仕方については作者の技術の上手さがあるので面白いというわけです。
そしてそして何度も言うようですが、ちょいと批判的になったのは恋愛部分のみです。一応恋愛マンガではあるものの失格人間ハイジのおすすめポイントは、はっきりいって恋愛ではないです。
恋愛だけなら自分、こんなに感動していませんし。
実は失格人間ハイジは全200話(+α)で完結していますが、大きく第1部、第2部、第3部と分かれます。
- 第1部 : 1~69話
- 第2部 : 70~116話
- 第3部 : 117~200話
恋愛色が特に強いのは第1~2部ですが、第3部は恋愛要素も含まれていますがそれ以上にヒューマンドラマが濃いのです。
やはり一番読んで欲しいのは第3部。第1部よりも第2部、第2部よりも第3部が自分は好きなのです(つまりはどんどん面白くなっていく進化系マンガである。)
ハイジの魅力はヒューマンドラマにある
失格人間ハイジには様々な人物が登場します。
- 主人公→ 灰澤 修治
- ヒロイン→ 一色 ひかる
- 元カノ→ 黒渕 愛子
- 完璧人間→ 伊勢 レイジ
- 妹→ 満潮 彩音
- 親友→ 嘉納 大
- 一色同期→ 久瀬 璃子
- 久瀬後輩→ 紺野 美空
- カミソリ→ 氏井 司
- オネェ→ 板橋 都
- 神様→ ? ? 宮許 チバ
上の主要人物は物語前半、ストーリーが進むともっと多くの主要人物が登場します。”主要”と書いたのはどの人物も唯のサブキャラで終わっていないから。
失格人間ハイジの凄いところは多くの登場人物それぞれのドラマを大事にしている点。
そしてマンガだからといって突飛すぎているわけでもなく、等身大なんです。それぞれが等身大の悩みを抱えている。
主人公のように一度夢を諦めた挫折があれば、親友のように何も夢が無いからこその葛藤があったり。
読んだらきっと、誰かしらのキャラクターの、全てとはいかないまでもある部分の考え方に共感するところ出てくると思います。
また簡単に事が進まないのも人生で。決してご都合主義みたくはいかない、がんばったところで上手くいかない事の方が多かったりしますよね。
含めてリアルに描かれているのがハイジです。
更にそんな悩みに対する作者のアンサーが鋭かったりするのがかっこいいんです。一つ、主人公の親友で例に出すと。
(さすがにネタバレが過ぎてしまうので、大分前提を端折りますが)親友の嘉納くん。持たざる者ならではの心の闇がありました。
それが主人公の頑張る姿を見て「もう夢は嘲笑わない」と心を入れ替えます。そうすれば自分も前に進めるはずだと。

普通はこのアンサーで終わりそうなところですが。作者の「違う!」というアンサーが入ります。

”「頑張っている奴を応援する」「よき理解者」なんていうかっこよくて心地良い居場所を見つけただけだ”


そうなんですよね。頑張ってる人を応援してると自分もパワーを分けてもらったかのような気がしますし、勘違いしてしまうかもしれないなって。


結局は己が頑張らんことには何も始まらないわけです。シンプルだけど意外と見落としがち、そんなところを作者は上手く突いてきます。
言葉の美しさは名言レベル
ハイジの登場人物の特徴としては年齢層が高めというのがあります。
主人公、ヒロインともに29歳からして高めですが、会社の上司や社長とか30代~40代のおじさま方も登場するのでさすが言葉の引き出しが多くてらっしゃる。
多分、作者の語彙力も高いのでしょう。基本キャラクターの台詞や繋ぎの文章は非常に丁寧な印象です。
一語一語を大事にしている感じがあります。だからこそグッとくる台詞も多いです。
いくつか引用としてあげてみます。
あいつはあの場から・・・・逃げたんじゃない・・・! 待たなかっただけ・・・ by完璧人間(68話)
今の自分にとっていちばん大事な事だけ考えな そしたら・・・それだけは大切にしような
もしその為に・・・何かを「捨てたり」「諦めたり」しても・・・それは「悲しいこと」じゃねぇからな 美談だけが美徳じゃねぇってこと byカミソリ氏井(107話)一歩ずつ一歩ずつ丁寧に進んでく それが一番の近道だ byハイジ(117話)
・・・誰かの生き方にひとこと言わないと気がすまないのは・・・自分の生き方に納得がいってないから by一色ひかる(126話)
・・・弱音を吐くのは結構 でもいじけるのはダメ そうじゃなきゃ無責任だろ? by社長(132話)
頑張っても報われるとは限らねーよ まーそこで諦めてもいいんだけど そーもいかないならさ 報われるまで頑張らなきゃダメなんだよな byもいっちょ社長(132話)
すぐ報われなかったってだけで・・・・一生諦めろ、なんて誰も言ってないだろ? by素敵すぎるぜ社長!(132話)
他人のせいにして他人を待たせるな! by締めも社長が相応しい(134話)
随所に散りばめられしユーモア
失格人間ハイジはストーリーが割と重いのですが(重いというか真面目なお話)気づいたら笑ってしまっている時も結構あります。
作者が上手くバランスを取ってくれているのか、隙あらばコミカルな描写やネタがずずいと入ってきます。


特にヒゲメガネな作者は印象的で急に乱入してくるメタ発言があったり。

後、↑のコマだけ見ても意味不明だと思いますが、129話は流れで読むとユーモア溢れていて楽しい好きな回(続けて130話もぜひ読んでほしいです。)
「縦スクロールの魔術師」という異名
キマシタ、縦スクロールについて。comicoの特徴でもあります。縦にスクロールして読むから縦スクロールマンガ!
「ただコマを縦に並べただけなのか?」
違います。縦スクロールならではの表現のしかたがあるんです。ハイジは一番、縦に読ませる事に凝ったマンガです。
だから「縦スクロールのアート」「縦スクロールの魔術師」という呼び方がコメントでは時折見られます。
本当に、漫画のレベルを超えた”アート”と呼ぶのに相応しい作品だと思います(漫画をバカにしていないか?云々ではなく、ただの比喩表現と捉えて下さい。)
ハイジで屈指の縦スクロール技といったら神回として名高い19話の僕ハ失格。回想シーンをフィルムに見立て、背景から時間の流れとカラーリングで元カノの心情の変化を表している。
って書いただけで何かもう鳥肌立っちゃうんですけど、さすがに画像で見せるのがめんどi・・・comicoの特集記事であったのでリンク貼ります(笑)
>> 読めば分かるそのアツさ!「失格人間ハイジ」特集♪
他にも個人的に好きな縦スクロールの描写。
37話。電車を縦長に横向きで描いて、縦で読むと窓にはヒロインの思い返しているイメージと台詞、横にすると座っている人々が少しコミカルに描かれている。
59話。最初、上から普通に読むとヒロインの視点で話と時が進む。途中で主人公の視点に切り替わり時間がさかのぼっていく。つまり最後から下から読むと時系列に、しかし上から読んでも違和感のない構成になっている。
154話。同じ店のカウンターにて、数時間前まで一色とレイジ、今はハイジと一色(席位置は一色挟んで2人の配置。)話の内容と背景色によって違和感なく過去と今が頻繁に切り替わりながら大きく一本の内容で進行する。
154話は言葉では非常に説明し辛いのでぜひ実際に見てほしいですね。
時間軸が違う2人の会話なのに、まるで3人で会話してるかのようにも見える、構図と描写が神がかったセンスの塊のような一話です。
というような感じで随所に縦スクロールを活かしたダイナミックな構図で描かれているのですが、特に154話の例のように”場面転換”が上手いと感じました。
別の場面に切り替わって、また戻って、がスムーズに行われていて全く違和感ないのが凄いです。



↑のように、台詞を上手く使って場面を切り替えているシーンが結構あります。細かく見だしたらほんとキリないです…。
みんなのコメントが熱い
最後に、comicoってみんなのコメントを読むのも楽しく、コメントが作品をより盛り上げているところがあります。
ハイジはcomico内ではなぜか人気がそこまで上がらなかったですが、コメントを見ると長文の感想が多くて、読者に熱い何かが宿ってしまってます。
完結作品なのでもうコメントの投稿はできませんが、最終話のコメントをいくつか勝手ながら…いやほんと申し訳ない。




作品への行き方
一応、comicoのホーム画面から作品にどう行けば良いのか書いておきます。
検索すれば一発ですけどね、まあ完結作品なのでアーカイブに入ってて少し分かり難いところもあるので。
comicoを立ち上げたら下の「公式作品」タブから右上の「完結」をタップして下にスクロールすると「完結・読み切り一覧へ」とあるのでタップ。

名作アーカイブ画面に移動したら失格人間ハイジはあります。

最後に、comicoでレンタル券やポイントについてまとめた記事を別途書いてますので、まだcomicoに慣れていない人は参考にしてみて下さい。
P.S.
先日、丁度ハイジのまとめ買いが50%オフになっていたので全話買ったのですが、再度まとめ買いをタップしたら所持コインが”0coin”になってる…。

詰めが甘いよcomicoさーん。笑