リアルな人狼ゲームの物語をノベル形式で楽しめる『レイジングループ』のアプリ版をレビューします。
物語は人狼ゲームがベースになっているものの、ただの化かし合いミステリーではなくて、タイムリープによる時間巻き戻しが軸となっているので展開が読めなくて面白いです。
本編が1080円と有料ですが、無料でメインルートまるまる1本ちょい(原文まま)もプレイできて、それは実に7時間を超えるボリュームです。
レイジングループはご丁寧にゲーム内で動画配信の範囲を指定してくれていまして、その範囲というのが無料でプレイできる部分なので、要は7時間分の面白さをこの記事では凝縮してお伝えできればと思います。
- おおかみだけではない突然現れるけがれという名の恐怖
- 記憶を持ったまま過去に戻れる斬新なストーリー展開
- メインルート1本が全体の1/3にも満たない大ボリューム
- 文章が読みやすくてユニークなのでつい何時間も読んでしまう
大きな特徴をあげるとこんな感じですね。
ゲームの基本情報
- 題名:人狼ADV レイジングループ
- 種類:ノベルアドベンチャー
- 記録:シーン単位のオート / 手動
- 画面:横向き固定
- 料金:本編1080円、エクストラ1本240円
レイジングループにおけるタイムリープの位置付け
最初にレイジングループの物語で一番の個性となっているところ、タイムリープによる時間巻き戻しの要素についてです。
人狼ゲームなので人がどんどん死んでいきます。当然、主人公が死ぬこともあります。そうなるとバッドエンドです。
普通のアドベンチャーゲームならバッドエンド後は直前の選択肢に戻ってやり直すと思いますが、レイジングループの場合は主人公が記憶を残した状態で別ルートへと分岐することができます。
それはどういったシステムなのか。
まずは普通にゲームを進めてバッドエンドになったとします。

バッドエンドによってはKEYアイテムというのを入手できます。

KEYには番号が振られていて、同じ番号の対となる選択肢が存在します。番号についてはシナリオチャート上からも確認できます。

シナリオチャートから該当の選択肢にジャンプすると、それまでは選択できなかった鍵付きの選択肢が選択できるようになります。

つまりはタイムリープした結果、バッドエンドを回避したり全く別の展開へと物語を分岐させることができます。これがレイジングループのシステムにおいて最大の特徴です。

この分岐というのがクセモノで、このシステムが凄いのは実は分岐とみせかけて一本道であるという点。ルートがAとBに分かれているように見えて実はA→Bと繋がっている点です。
シナリオのコンプリートで考えると、コンプ達成にゲーム性を求めている方にこのシステムはつまらないかもしれません。しかしコンプが面倒に感じる人にとってはこのやり方は自然に網羅できていくので非常に楽に感じます。
レイジングループの人狼ゲームの特徴
物語の中心はリアルな人狼ゲームでして、おおかみとなった者はリアルにひとを殺します。そのルールは人狼ゲームに準拠。ですが、レイジングループならではにアレンジされているところがあります。
人狼ゲームのルールを要約
そもそも人狼ゲームのルールについて詳しく知らない方もいると思いますので、要約してみます。
簡単には、嘘つきを見破るコミュニケーションゲームです。
10人前後の人数を要します。それぞれ役割を設けられます。大きくは村人と人狼の2グループに分かれますが、人狼は最大3人と少人数です。
- 村人:人狼を全滅できたら勝ち
- 人狼:村人を人狼と同数まで殺せたら勝ち
夜→朝→昼→夕方 と1日の流れ(ターン)があり、夜には人狼が誰か1人を殺してしまう。そのため、昼にみんなで話し合って夕方にて人狼と思われる1人を処刑しないといけません。
化かし合いを有利に進めるため、主に村人には占い師や霊媒師、狩人といった数名の役職が与えられます。
例えば占い師は、朝になると1人だけ指定した者が村人か人狼かを見ることができます。
役職をバラすリスクとか、殺されないため嘘を付く人狼をどうやって見破るか、といった頭脳戦を楽しむのが人狼ゲームです。
冒頭のあらすじから人狼ゲームのアレンジ具合
レイジングループでは人狼ゲームのルールはどうなっているのか、実は少しだけ違う点があるというか、それよりも+αされた要素の方が大きいんですけど。
というのも主人公が辿り着く集落に古くから伝わる掟、とか世界観の部分が大きく関わってくるので、ここで物語の中で語られる『伝承』に触れないといけません。
以下、軽いあらすじ込みにて。
主人公の房石陽明(ふさいしはるあき 24歳)は彼女と別れた傷心から一人バイク旅、その途中で道に迷ってしまう。

そこで出会った芹沢千枝実(せりざわちえみ)に招かれ辿り着いた先は村八分に追いやられた集落だった。

そこは10年か20年に一度は視界を奪うほどの濃霧に覆われてしまう いわく付き の場所。たまたま主人公が迷い込んだ日の夕方に濃霧がやってきて、集落からは出られなくなってしまう。
そして集落には伝承があり、濃霧にまぎれて『おおかみ様』が『ひと』と入れ替わってしまう。そして毎晩1人だけ殺してしまうと。

おおかみに対抗するため、ひとには『へび、さる、からす、くも』の4つの加護の力を授かった者がおり、昼に全員参加の宴を開いて誰か1人だけ くくる人 を決めないといけない。

「おおかみ様をみんなくくれば、勝ち。
おおかみ様にみんなやられれば、負け。」
加えて伝承の中では神様が決めた掟があり、守らない者には『けがれ』が襲いかかる。
夜には1人で施錠をし、身を清めた状態で寝に入らないといけない。
掟を破りけがれに襲われた者は無残な死を迎えてしまう。

※注:かなりはしょっています
因みに『へび、さる、からす、くも』というのが人狼ゲームにおける役職の部分です。
- へび:指定1人がおおかみか分かる(占い師と同じ)
- さる:2人いてもう1人のさるが分かる(共有者と同じ)
- からす:くくった人がおおかみか分かる(霊媒師と同じ)
- くも:指定1人がおおかみに殺されるのを防ぐ(狩人と同じ)
そんなわけでイレギュラーな存在が『けがれ』。
人狼ゲームのルールだけで見たら基本は昼と夜で1日に2人が殺されてしまうところ、いきなり想定外の事が立て続けに起こります。
読み物としての読ませ方について
レイジングループはノベルアドベンチャーゲームということで、選択肢による分岐はありますが文章を読むのが中心になります。
一通り備わっている機能面
スキップ機能とかの機能面は豊富に備わっているので、全くストレスなく読んでいけました。
↓はメニューを表示した画面、2行に及ぶほどに一通りの機能が備わっていることがわかると思います。

オート機能も使いやすいですし、特に次の選択肢まで一気に飛ばしてくれるネクスト機能は周回時には重宝します。

メッセージ速度も変えられますし、これらの使い方について含め、最初にチュートリアルで丁寧に教えてくれる親切設計です。

ヒントコーナーまである親切設計
チュートリアル以外にも新設設計なのがバッドエンド時のヒントコーナー。
ひつじのマスコットキャラクターがご丁寧に理由とどこからやり直せば良いかを教えてくれます。
こんな至れり尽くせりなノベルゲームはそうそうないのではと思うくらいに細かなところまで作り込まれています。


選択肢の出現頻度は控え目
アドベンチャーゲームといえば選んだ選択肢によってシナリオが分岐するというもの、レイジングループでも仕組みは同じです。
ゲーム性の部分で唯一気になったのが、選択肢の出現頻度が少ないことです。
5時間プレイした時点で選択肢が出てきた回数は5回でした。タイムリープなんて初めの頃の1回のみです。
正直「タイムリープはもっと発生しても良かったのでは?」と思いました。なので、このゲームは物語を読むのに大半の時間を費やすことになります。

ホラー表現のレベルは控え目
一応、人がどんどん殺されていく内容なので、ホラー系が苦手な人にとっては「どのレベルなの?」が気になるところだと思います。
主観ではありますが、ホラーゲームほど怖がらせるような表現はないです。
まあ文章は割と直接的な表現がちらほらあったりもしますが、画的にはかなりオブラートに包んでくれていますので、↓の画像レベルが大丈夫なら、きっと問題ないです。

どうしても苦手な人向けに残酷な表現を表示しないように設定を変えられますので、よっぽどの人でない限りは安心してプレイできます。
ただしこのゲーム、大事なシーンはボイス付きです。
予想外のキャラが予想外に豹変して奇声を発するシーンが急にやってきた時は、丁度静まり返った夜中だったこともあり、びくっとなったことはありました。笑
物語のユニークポイント
レイジングループの物語は個人的には非常に面白かったです。
何にドハマったのか、大きくは2点あります。
キャラと文章のクセが強い
文章がとにかく読みやすく感じました。
結構、キャラクターの言い回し含めて文章のクセは強く感じたのですが、なぜかテンポ良く読んでいけます。

↑は独特だけどテンポ良いなと思った文章。↓なんて「そんな文章あり!?」と思ったほどにユニークです。


また主人公のキャラクター性もクセが強いです。
おとぼけたようでキレ者で低姿勢なようで強引なところがあってつかめないというか、でも(特に女の子には)ノリがチャラいところもあったり・・・(ボイスは基本ローテンション。)
絶妙なふざけ具合なのでハマれば良いけどハマらなければ引いてしまうラインですね。


タイムリープするタイミングがニクイ
無料でプレイできるのはメインルート1本分+αということで、一応のエンディングを迎えます。スタッフロールが流れるという意味で。
そんな終盤時からエンディングに至るまで、プレイ中の自身の率直な感情の変化を書いてみました↓
1.えっ、何その展開?
2.あれ・・・明らかに終盤なんだけど何これ全く着地点が読めない・・・
3.何その終わり方・・・(納得いかない模様。)
4.あっそうか、これタイムリープでやり直すのが前提の物語か、ってそういう事か!?
5.そう考えると実に面白い!
6.というかその面白さがわかるのに7時間は長すぎ!笑
メインルート1本分+αやり終えたプレイ時間は7時間30分といったところです。
1回目のタイムリープから次まで5時間以上出てこなかったのですっかり忘れていました。
しかしこのやり方は非常にずるくも感じました。
7時間もこの緊張感ある世界観に浸り、やり直し前提とはいえ予想外で納得いかない結末を迎えたら否が応でも真なる結末が気になるというもの。
しかも2回目のタイムリープ、戻り先は冒頭の冒頭です。1周目とは全く違う展開にシフトしていきます。
「こんなの本編購入ポチリするわ!」という。笑

いやほんと物語も文章もつい熱中してしまうほど惹き込むクオリティの高さではあるんです。
まとめ:予想外な物語の展開が面白い
そんなわけでレイジングループ、ノベルゲームとしての完成度は非常に高いです。
無料でプレイできる部分だけでも息をのむ展開が続くので読み応えがあります。
しかも無料部分は全体の1/3にも満たなくて、2回目の大きなタイムリープ後には選択肢の分岐も多くなります。
あとコミュニケーションゲームというところでやっぱり頭脳戦なので内容的に難しいところもあって。主人公の見解とか、一部理解できなくて結構考えてしまった時間もありました。自分の頭悪さ故ですが、正直もう少し噛み砕いて説明してほしかったと思うところはありました。
考えさせられるから面白いんですけどね。
無料だからと広告が多数表示なんてのもなくてほんとストレスなくプレイできます。
本編購入の1080円が安く感じるほどの名作です。
P.S.
この記事を書いてから1週間かかりましたが、レイジングループの全てを完読しました。
本編はもちろん、本編をおまけ含めてもう1周、更にはエクストラコンテンツの5本含めて全て。
凄まじいボリュームで20時間、下手したら30時間かかったかもしれません。
レイジングループはアプリのダウンロード先が2パターンあります。後からアプリ内で購入する無料の通常版と有料のプレミアムセット版です。
お試しで無料版からプレイしてみて本編を購入したくなった場合に、きっとどちらで購入すべきか迷うと思います。
私自身は当初は軽めの記事にする前提で考えていたので「本編だけで良いや」と思っていたのですが、結果的には全てのエクストラコンテンツを単品購入しました。
全部プレイしてみた上で「こんな人は最初からプレミアムセットにした方が良い」と思うところがありますので追記します。
おまけ:プレミアムセットは買いか?
まず、値段的な比較から。
レイジングループは本編が1080円、本編にエクストラコンテンツが5本付いたプレミアムセットは1600円です。
エクストラコンテンツは単品でも購入でき、単品の場合は1本240円。
つまりは全てを単品で購入した場合は2280円、プレミアムセットの方が680円お得となります。
私の場合はお得ではない買い方をしてしまいました。なぜか?
多分、大多数の人は購入するかの判断材料としてまずは無料のお試し版をプレイしてみると思います。
レイジングループの場合、本編の中にはメインルートと呼ばれるものが大きく4本あります。その内、1本+αが無料で試せるわけです。
ボリューム的には7時間強もあるので判断するには十分な量ですよね。
ただし、それはあくまで本編に対しての判断で、エクストラコンテンツまで買いかどうかは私の場合はこの時点での判断材料は少なかったです。
いえ・・・、無料部分だけでも十分以上に面白かったので、この時点ではもう(ついでな感じで)プレミアムセットでも良いかなとは思っていました。
しかしながらここで1つ罠が。
プレミアムセットは要は別アプリなので、これまでプレイしたセーブデータは残りません。
一応レイジングループはスキップ機能が優れていてかなり素早くシーンを飛ばすことができます。
だから対して手間はなかったと今考えると思いますが、当時はまた最初からプレイするのが面倒に感じて本編購入だけに留まりました。
もう1つ理由としては、無料部分終了時にはまだプレミアムコンテンツの内容がピンときていなかったというのがあります。タイトルも『○○VS○○』という書き方で、アナザーストーリー的なのかなというくらいしか。
しかし、本編を全部プレイし終わった時点でもう一度エクストラコンテンツに関する説明が入ります。
この時点ではもう我慢ならなくなっていました。理由としては2つ。
1つは、本編のストーリーの奥深さは無料部分どころの非ではなく「マジで面白い!」という心情に陥っていた点。
もう1つがエクストラコンテンツは本編部分の後日談なショートストーリーという説明が改めてされた点。
ここで「プレミアムセットは買いか?」に対する1つの結論として。
映画でも小説でも見終わった後にifストーリーとか、その後の展開とかをつい想像(妄想)してしまう人
間違いなく最初からプレミアムセットにした方が良いです。絶対に気になってしまうので。笑(それは本編の面白さあってこそ故に。)
割り切れる人は本編だけ楽しむのもありだと思います。
というのも、冷静に見てエクストラコンテンツ1本240円という料金は高く感じます。
- 1本は30分~1時間のボリュームである
- エクストラ用のCGはない
- 選択肢といったゲーム性は一切ない
高く感じたのは単純に本編が1080円である、という本編のボリュームと比較してです。
ただCGがないのは残念に思いました。ほぼテキストだけというのはどうしても画面が寂しく感じます。
そして5本全て合わせても3時間くらいのボリュームです。そうなると単品購入で1200円は高いです。
ではプレミアムセットで1600円だとどうかというと、私自身の感覚では安いです。それは本編が1600円だったとしても安く感じるクオリティの高さだからです。
エクストラの後日談ストーリーもそうですが、本編クリア後のおまけ要素が実にファンサービスというのをわかっている仕掛けだったのが大きいですね。
あとやっぱりボリュームが凄い点。
30時間のプレイが苦にならないほどにずっと面白かったですので。期間としては1週間以上も費やしてしまいましたが後悔はないです。
因みにエクストラの感想としては、真面目な話から怖い話やひたすらネタに走って笑える話までバランス取れていましたが、総じてほっこりしました。
まあ本編が人狼ゲームによる殺し合いと終始緊張感が続く内容だったので、対比的に後日談は安心して読めたというのが大きいです。
あともし本編だけで良いかなと思う人でも『羊VS報告書の山』は読んでみるのをおすすめします。

本編の中で1つ大きな謎、↑でいう「あの子の事」について深く知ることができますし、巻き戻りについても理解が深まります。